
はじめに:筋トレは「動作」をどう見るかで結果が変わる
筋トレをしていると、「この種目は効く・効かない」「部位別トレーニングが大事」といった話をよく聞くと思います。
でも、その前に知っておきたいのが──
「体のどの部位がどう連鎖して動いているか?」
という運動連鎖(キネティックチェーン)の視点です。
これは筋肉を動かす「力の通り道」のようなもので、
この考え方があるかどうかで、あなたの筋トレの精度が劇的に変わります。
キネティックチェーンとは?
キネティック=運動
チェーン=連鎖
つまり、「運動連鎖」。
体は一つの筋肉だけで動くわけではなく、複数の関節や筋肉が連動して動いているという考えです。
OKCとCKCという2つの分類
このキネティックチェーンの考えをもとに、運動は大きく2種類に分けられます:
✅ オープンキネティックチェーン(OKC)
→ 末端(手・足)が自由に動ける運動
✅ クローズドキネティックチェーン(CKC)
→ 末端が地面や器具に固定されている運動
OKC/CKCはどこから来た?誕生の背景を知ろう
OKC(オープンキネティックチェーン)とCKC(クローズドキネティックチェーン)は、リハビリテーション医学から生まれた概念です。1970〜80年代、関節手術後のリハビリで「同じ筋肉を鍛えているのに回復結果が違う」という現象が多数報告され、運動の仕組みそのものに注目が集まりました。
そこで注目されたのが「キネティックチェーン(運動連鎖)」という考え方です。人間の体は、筋肉や関節が単独で動くのではなく、複数が連動して機能しています。この連鎖の構造を見直す中で、「末端が自由に動く運動=OKC」「末端が固定された運動=CKC」という分類が導き出されました。
この分類により、運動の種類ごとに関節への負荷、筋肉の使われ方、神経系への影響などが大きく異なることがわかり、リハビリの精度が飛躍的に向上しました。OKCは単関節でのピンポイント強化、CKCは多関節での連動性強化に適している、という役割が明確になったのです。
その後、OKCとCKCの概念はスポーツ科学や筋トレ分野にも応用され、現在ではトレーナーやアスリート、ボディメイク目的の一般トレーニーにまで広く浸透しています。「どのように体を動かすか」を見極める基準として、今や基本中の基本となっています。
本質的な違いは、「どこが固定されているか?」
ここが最大のポイントです。
OKCとCKCは「自分が動いているかどうか」ではなく、
力が“どこから・どこへ”伝わっているのか
で分かれます。
- OKC:体が固定されていて、末端が動く
- CKC:末端が固定されていて、体が動く
この違いが、筋肉への刺激の質を大きく変えます。
筋トレ種目の分類まとめ
OKC(オープン)とCKC(クローズド)の違いをスッキリ理解しよう!
◆まずはOKC(オープンキネティックチェーン)から
OKCとは?
→ 「手や足の先(末端)が自由に動いている運動」です。
体が固定された状態で、末端を一方向に動かすタイプの種目になります。
代表的なOKC種目一覧:
部位 | 種目 | コメント |
---|---|---|
大腿四頭筋 | レッグエクステンション | 脚を伸ばす動きだけ |
ハムストリングス | レッグカール | ヒザを曲げるだけ |
背中 | ラットプルダウン | イスに座ってバーを引く |
胸 | ペックフライ(マシン) | 腕を閉じる動き |
肩 | サイドレイズ | ダンベルを横に上げる |
上腕二頭筋 | アームカール | 手を曲げるだけ |
上腕三頭筋 | ケーブルプレスダウン | ロープを押し下げる |
腹筋 | クランチ | 上半身だけ丸める |
👉 特徴:
- 単関節種目が多い
- マシンやケーブルを使った運動が多い
- 狙った筋肉にピンポイントで効かせやすい
◆次にCKC(クローズドキネティックチェーン)
CKCとは?
→ 「手や足の先(末端)が地面や器具と接して固定されている運動」です。
その固定点に対して、自分の体を動かす or 抵抗するタイプの種目になります。
代表的なCKC種目一覧:
部位 | 種目 | コメント |
---|---|---|
大腿四頭筋 | スクワット | 足を地面に固定してしゃがむ |
ハムストリングス | ヒップスラスト | 足と背中を固定して押し上げる |
背中 | チンニング(懸垂) | 手がバーに固定、体を持ち上げる |
胸 | プッシュアップ(腕立て伏せ) | 手が地面に接地 |
上腕三頭筋 | ディップス | 手をバーに固定して体を押し上げる |
腹筋・体幹 | プランク | 手・足を地面に固定して姿勢キープ |
👉 特徴:
- 多関節運動が中心
- 全身の筋肉が連鎖的に働く
- 自重やフリーウェイトで行う種目が多い
◆最後に:OKCかCKCかの判断のコツ
OKCとCKCの違いを見分けるときは、以下の3つをチェックすればOKです。
見分けポイント | OKC | CKC |
---|---|---|
末端(手・足) | 自由に動く | 固定されている |
動くのは? | 末端(バー・足)を動かす | 自分の体を動かす/支える |
関節の使い方 | 単関節メイン | 多関節・連動的 |
この概念を知ってると、何が変わる?
「筋肉を動かす」から「体を使う」に変わる
OKCばかりだと筋肉はついても「動けない体」になりやすい。
CKCの連動性を知ることで、実用的な筋力や体幹力も鍛えられます。
フォームへの意識が変わる
「この動きはOKCだな」と理解すると、
フォームが雑でも「一応効いてる」から
→「効かせたい筋肉だけを丁寧に動かす」という意識に変わる。
CKCなら「どこか1ヶ所が崩れると全部に影響が出る」という全身意識が自然と芽生えます。
種目の選び方がロジカルになる
「筋肥大を狙いたいからOKC」
「スポーツに活かしたいからCKC」
「関節負荷が心配だからOKC中心」など、
トレーニングメニューの意図が明確になる
よくある勘違い
- 「体が浮いてるからOKC」→ ❌
例:チンニングは体が動いていてもCKC - 「器具を使ってるからOKC」→ ❌
例:レッグプレスは器具でもCKC(末端固定)
👉 見た目じゃなく、どこが“支点”になってるかで判断するのが本質。
まとめ:トレーニングを深くするための基礎知識
筋トレにおけるOKCとCKCの違いは、単なる言葉遊びではなく、
「自分の体をどう使って鍛えるか?」という本質に直結する考え方です。
何となく鍛えるのではなく、動きの構造を理解して鍛える。
この視点があるだけで、筋トレの世界が一段深く、そして楽しくなります