
筋トレ初心者から中級者にありがちな誤解。
「ラットプルダウンもローローもどっちも広背筋を鍛えるんでしょ?」
──たしかに間違いではありませんが、「だから鍛える部位は一緒」と考えるのは大きな誤解です。
結論から言えば、ラットプルダウンとローローでは、鍛えられる筋肉も、刺激の入り方も、関与する筋群も、まったく異なります。
ラットプル=広背筋の“広がり”を作るメイン種目
ラットプルダウンは、いわゆる「引く系(プル系)」種目の王道。
- 動作方向:上から下への垂直引き
- 主に働く筋肉:広背筋の外側・上部、大円筋、僧帽筋下部
- フォーム:やや背中を反らせ、腕を肩より後ろに引き下げる
この動きによって、“背中の広がり”=逆三角形のシルエットを作るのに非常に有効です。
しかも、脊柱起立筋群も動員されやすく、姿勢を反らせる際にアイソメトリック収縮(静的収縮)でサポートに入ります。
この脊柱起立筋群というのは、背骨の両側に縦に走る3本の筋肉の総称であり、「背中をまっすぐに保つ」「反らす」といった基本的な姿勢維持に関わる“縁の下の力持ち”のような存在です。
外側から順に、
- 腸肋筋(ちょうろくきん):肋骨から骨盤までを支える
- 最長筋(さいちょうきん):脊柱起立筋の中で最も長く、中心を走る
- 棘筋(きょくきん):背骨に最も近く、細かい動きや安定性を担う
この3つで構成されています。
ラットプルダウンのように上体をやや反らせて引く動作では、これらの筋肉が「背骨を伸ばした状態をキープ」するためにフル動員されるのです。
つまり、ただバーを引いているだけに見えて、背中の奥では静かに背骨を支える“姿勢筋たち”が奮闘しているというわけです。
しかも、広背筋の下に重なるように位置しているため、構造的にも“裏方”になりがちですが、姿勢やフォームの安定にとって極めて重要な存在です。
ラットプルをやり込むことで、広背筋とともにこの深層筋にも刺激が入り、「厚く、引き締まった背中」を作る基礎が整うわけです。
外側から腸肋筋、真ん中が最長筋、一番内側が勅筋。
覚えにくいので、
「腸肋(ちょうろく)というお弟子さんが、最澄(最長=さいちょう)に弟子入りし、棘(きょく)という曲をリリースした」で覚えてみてはどうでしょうか?

ローロー=広背筋の“厚み”を作る水平引きの独立種目
一方でローロー(シーテッドロー)は、真横に引く“水平引き”の種目。
- 動作方向:前から後ろへの水平引き
- 主に働く筋肉:広背筋の中部〜内側、僧帽筋中部、菱形筋、三角筋後部
- フォーム:上体はほぼニュートラルで、肩甲骨を寄せる動作がメイン
ローローの最大の特長は、「背中の厚み」と「引き締め」に強烈に効くこと。姿勢筋としての脊柱起立筋の動員は抑えめですが、その分、背中の中央部を意識的に収縮できる。
「ローローはラットプルの補助種目」は完全に誤解
「ラットプルダウンがメインで、ローローはその補助種目でしょ?」
この考え方は、筋トレの構造的理解が浅い証拠です。
ラットプルは広がり、ローローは厚み。
どちらも後背部を構成するうえで“独立した役割”を持っています。
補助種目ではありません。方向が違えば、刺激される部位も違うのです。
解剖学的に見ると、菱形筋は広背筋の
”深層”
に位置してます。
位置関係としては、
表層 → 広背筋(Latissimus dorsi)
中層 → 菱形筋(Rhomboid major / minor)
深層 → 脊柱起立筋群(腸肋筋・最長筋・棘筋など)
✅ 脊柱起立筋群(読み:せきちゅう きりつきんぐん)
このグループは3つの筋肉で構成されており、背骨の両側を縦に走る深層筋です。
1. 腸肋筋(読み:ちょうろくきん)
- 英語:Iliocostalis
- 最も外側を走る
- 肋骨〜骨盤をまたいで姿勢保持をサポート
2. 最長筋(読み:さいちょうきん)
- 英語:Longissimus
- 中央部に位置する
- 脊柱起立筋群の中で最も長く太い
3. 棘筋(読み:きょくきん)
- 英語:Spinalis
- 背骨に最も近い(内側)
- 背骨沿いに走り、細かい姿勢制御に関与
広背筋は“1枚板”ではない ― 層構造を意識せよ
「後背筋=広背筋」だと思っているなら、それも誤解。
- 広背筋は表層部に位置する大きな筋肉ですが、
- その下には脊柱起立筋群(腸肋筋・最長筋・棘筋)**が縦に走っています。
さらに、僧帽筋や菱形筋、大円筋なども複雑に重なり合い、立体的な層構造を作っています。
つまり、「広背筋を鍛える」と一口に言っても、
- どの方向に引くのか?
- どの関節角度で?
- どの姿勢で行うのか?
これらによって刺激が届く層も場所もまったく違ってくるのです。
✅ 正確な読み
- 広背筋(こうはいきん):正しい筋肉名(解剖学的名称)
- 後背筋(こうはいきん と読まれがち):誤記、または俗称・誤変換の可能性大
🔍解説
「広背筋(Latissimus dorsi)」が解剖学的に正しい名称です。
漢字も「広い背中の筋肉」という意味で正確。
一方、「後背筋」という言葉は、日常的な誤用であって、正式な筋肉名としては存在しません。
たとえば、「後背部(こうはいぶ)」という表現は正しくありますが、「後背筋」は造語・誤変換・俗語です。
✅結論
- 正しくは「広背筋(こうはいきん)」
- 「後背筋」は誤用。使わない方がよい。

🔚まとめ:だからこそ両方やるべき
| 種目 | 広がり | 厚み |
|---|---|---|
| ラットプルダウン | ◎ | ○〜△ |
| ローロー(シーテッドロー) | △〜× | ◎ |
✅ 広がりを見せる筋肉 → 広背筋(こうはいきん)
- 読み方:こうはいきん
- 英語名:Latissimus dorsi
- 主な働き:肩関節の内転・伸展・内旋(上から腕を引き下げる動作)
- 特徴:
- 腰〜背中全体に広がる扇状の大きな筋肉
- 横方向に広がって見えるため、逆三角形のシルエットの主役
- 主にラットプルダウン、懸垂などで刺激される
✅ 厚みを出す筋肉 → 僧帽筋中部・下部、菱形筋、脊柱起立筋群
1. 僧帽筋中部・下部(そうぼうきん)
- 肩甲骨の内転・下制を担う
- 背中の中心〜下部の厚みを演出
- ローロー、ベントオーバーロー、Tバーロウなどで強く刺激される
2. 菱形筋(りょうけいきん)
- 肩甲骨を内側に寄せる動作(肩甲骨の内転)
- 背骨と肩甲骨の間に位置し、中央に立体感を出す
3. 脊柱起立筋群
- 背骨を支える深層筋(腸肋筋・最長筋・棘筋)
- 厚みというより奥行き・重厚感に貢献
- デッドリフト・グッドモーニング・ローローなどで刺激される
- ラットプルダウンだけで広背筋の広がりは作れる。
- だが、背中の完成形を目指すならローローも絶対に必要。
- どちらかが“補助”ではなく、両方が“主役”になりうる。
「背中がデカい=広背筋がデカい」ではなく、
「背中が厚くて広い=複数の部位を意識的に鍛え分けている」証拠です。