Contents~目次~
はじめに
運動後のサウナは、持久力を向上させる効果があることを知っていますか?トレーニング後のサウナを継続すると、身体の生理的順応が働き、持久力がアップするという研究結果が出ています。
この記事では、運動後のサウナによって持久力が上がる理由について解説していきます。また、疲れが取れやすいサウナの入り方や、サウナ大国フィンランドのトレーニングとサウナ事情についても紹介します。スポーツや日々の生活で持久力を向上させたい人はぜひチェックしてみてください。
Journal of Science and Medicine in Sportsによる研究
Journal of Science and Medicine in Sports(※1)にて発表された研究では、6名の男性長距離ランナーを対象に実験がおこなわれました。実験内容は次のとおりです。
被験者6名は、トレーニング後にサウナに入る生活を3週間つづけ、3週間のリセット期間を設けたのちに、3週間の制限付きトレーニングをつづけた。そして、サウナ期間とトレーニング期間のそれぞれが完了した1~2日後に、15分のランニングをおこなった。さらに、各期間のトレーニング後に血漿、赤血球、血液量を計測した。
この実験の結果、サウナ期間をもうけた場合は15分ランニングの際に疲労を感じるまでのタイムが、他方のトレーニング期間よりも32%伸びました。そして、サウナ期間をもうけたほうが、ランニングおける持久力が1.9%向上することがわかりました。(※2)
サウナによって持久力が上がった理由
サウナ期間をもうけた時にランナーたちの持久力がアップした原因は、血液にあります。実験でおこなわれた血液検査では、サウナ後のランナーたちの血漿と赤血球の料が7.1%増えていることがわかりました。
これは、心臓の心拍出量が上がったことが関係しています。心拍出量とは、心臓が1分間に身体中に送り出す血液量のことです。血液は全身に酸素を運ぶので、心拍出量が多いと身体に酸素が行きわたりやすくなります。
つまり、ランナーたちの血液検査で血漿と赤血球が増えたのは、サウナによって心拍出量が上がったからであると言えるのです。
そもそも人間の持久力を上げるためには、心拍数と心拍出量が密接に関わっています。とくにアスリートは、高いパフォーマンスを保つためになるべく心拍数を低く保ったまま、身体全体に酸素を送らなければなりません。
そのためには心拍出量を上げて、1回の心拍によって身体に巡る血液量を増やす必要があります。サウナに入ることで、身体が体温調整をするために心拍出量が増えやすくなるので、アスリートたちも自然と持久力アップのための身体づくりができていたのです。
この実験では3週間、毎日サウナに入り続けているため、身体が順応して持久力アップにつなげることができています。普段の生活で毎日サウナに入るのが難しければ、1~2年間などの長期スパンで持久力アップを目指しましょう。
疲れが取れやすいサウナの入り方
サウナに入る時もちょっとした意識をすれば、疲れがとれやすくなります。ここでは疲れが取れやすいサウナの入り方を3つ紹介します。
①身体を軽く温めてからサウナに入る
サウナに入る時は身体を軽く温めてから入りましょう。急激な体温の変化は、自律神経の乱れに繋がります。とくに交感神経が高まると身体に力が入りやすくなったり、眠りがあさくなったりするため、疲れが余計に溜まります。
また、慣れていない状態で高温のサウナに長時間いると、内臓に負荷がかかります。内臓の負担は疲れの元にもなるため、なるべく身体に負担をかけない程度にとどめましょう。
②サウナ後に軽く水風呂or冷水シャワー
サウナ後に水風呂や冷たいシャワーを浴びると、血行促進に繋がります。
そもそも血行不良によって体内の物質が十分に運搬されずにいると、筋肉を動かしたときに発生する疲労物質が停滞し疲れが取れないというメカニズムがあるので、血行促進は重要と考えてよいでしょう。
とはいえ、いっきに冷たい水の中に飛び込んだり、冷水を大量に浴びたりすると、心臓に負荷がかかるので注意が必要です。水温はできれば10℃以上で、軽く浸かる・浴びる程度にしましょう。
フィンランドではトレーニング後のサウナは当たり前?
サウナの国フィンランドでは、トレーニング後のサウナは必須です。もちろん家にサウナがない人もいるため、人によっては運動後にサウナに入らないこともあります。しかし、フィンランドにある市民ジムや私営のジムなどには、ほぼサウナが併設されています。
「サウナがついていないジムやサウナのクオリティが低いジムは、利用者から評価が低くなりやすい」と言われるほど、フィンランド人にとって「運動+サウナ」はセットで外せないものです。
フィンランド人はスイミングも好きで、ランニングに続いて手軽におこなえる運動として人気です。フィンランドには多くの湖があり、海に面している国でもあるため、小さい頃から水泳を習って泳ぎを身に付ける習慣があります。
また、冬場は外での運動が困難な地域も多いため、室内で身体を動かせるという点もスイミングが人気な理由のひとつです。
フィンランドには娯楽施設が少ないわりには、サウナ併設のプールやスパがそこそこ多くあり、サウナの国ならではのアミューズメント事情がうかがえます。
ランニングやプール、ジムなどでほどよく身体を動かし、サウナでゆっくり身体を休ませあたためる。フィンランドでは、スポーツにもサウナが一役買っているのです。
トレーニングとサウナを上手く組み合わせよう
トレーニング後にサウナに入る生活を続けていくと、身体の心拍出量と血液の状態に変化が生まれ、持久力が上がる身体に近づきます。
サウナや運動の頻度が低いと、持久力アップ効果がすぐに出ない場合もありますが、長期的にトレーニングとサウナを続けることで効果が得られる可能性が高くなります。また、トレーニング後にサウナに入るときは、少しの工夫で疲労解消しやすい入り方を心がけましょう。
フィンランド人は幼少期からサウナが身近にある生活を過ごしており、運動とサウナを上手く組み合わせている人が多くいます。ぜひトレーニング後はサウナで疲れを癒し、同時に体力アップも目指してくださいね。
<h2>引用文献・サイト</h2>
※1
※2
Guy S M Scoon, William G Hopkins, Simon Mayhew, James D Cotter
“Effect of post-exercise sauna bathing on the endurance performance of competitive male runners” (2016/7/31)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16877041/
Anthony S Leicht, Aaron Halliday, Wade H Sinclair, Shaun D'Auria, Martin Buchheit, Glen P Kenny, Jamie Stanley
“Heart rate variability responses to acute and repeated postexercise sauna in trained cyclists” (2018/8)